減価償却費とは、税法上、取得した金額をある期間にわたって分割して費用計上する仕組みのことです。減価償却費は実際に出ていく費用ではないため、耐用年数が短く、償却率が高いものほど手元に残る金額は多くなります。しかし、減価償却費は多ければ多いほどよいかというと、実はそうではない場合もあるのです。
不動産収入には、家賃などの不動産収入の他に、取得した不動産を、取得した金額以上の金額で譲渡して、その差額の値上がり益を期待する譲渡収入というものもあります。取得した不動産を他者へ譲渡した場合、譲渡益に税金が掛かります。譲渡益は、[譲渡益=譲渡価額-譲渡費用-取得費]という計算式で算出します。この場合、取得費とは、取得時に支払った費用から、譲渡時までに計上した減価償却費を控除したものを指します。そのため、減価償却費として計上した金額が多ければ多いほど、取得費として計上できる金額は少なくなり、譲渡益が多く計算されます。そして、その譲渡益に対する課税も増えるという訳です。
上記に加えて、譲渡で利益を期待する場合の注意点がもう1つあります。それは、所有期間です。譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものを短期譲渡とみなし、約39%の税金がかかります。譲渡した年の1月1日において所有期間が5年超の場合でも約20%の税金がかかります。
減価償却費を含む、不動産収入の必要経費を利用した『節税』は魅力的ですが、『節税』を目的に不動産を取得すると、上記のように譲渡時に思いがけない課税をされることもあります。 不動産の取得は、税制面だけでなく、老後の資産形成やライフプランにも大きな影響を与えます。取得前のシミュレーションや、取得後の毎年の確定申告のアドバイス、そして物件管理などのアフターフォローにまで気を配ってくれるような信頼できる不動産会社選びが大切です。